日本社会停滞の原因(政治編)

現在の民主党の惨状をもっとも簡単に説明しようとすれば民主党政権発足当時のワシントンポスト(October 2011 by John Pomfinet&Blaine Harder)の説明を引用するのが一番手っ取り早いかもしれない:
The official, who spoke on the condition of anonymity because of the sensitivity of the issue, said the new ruling party lacks experience in government and came to power wanting politicians to be in charge, not the bureaucrats who traditionally ran the country from behind the scenes. Added to that is a deep malaise in a society that has been politically and economically adrift for two decades. 

“今まで日本を動かしてきたのは政治家では無く、官僚であった。但し過去20年間、官僚主導による行政が社会停滞を招いてきた。民主党は官僚に取って代わり主導権を取ろうとしたが、政府運営の経験が全く無いので混乱してしまった。”のである。官僚主導の原因は、政治家のレベルの低さ(行政能力不足)にあるのだから、政治家のレベルアップをしないで、官僚から仕事を取り上げたら何が何だか分からなくなるに決まっている。実際その様な混乱が起こっているのだ。ここで日本社会の停滞(政治的側面)の原因をあげると:
* 官僚主導の国家運営の限界。官僚主導の政治は段々非効率になってゆくことは自明のことである。遅くとも1970年には方向転換すべきであった。
* 官僚から政府首脳への道が、自民党がつくった5選ルール(5選しないと大臣になれない)によって閉ざされてしまったこと。これにより官僚トップが総理大臣になるチャンスは皆無となった。(50歳から5選すると70歳になってしまう。)戦後、総理大臣の大半は官僚出身だったが、宮沢喜一以降、官僚出身の総理大臣はいない。その代わり若い時から大臣になることの出来る2-3世議員ばかりが総理大臣になった。つまり、優秀な官僚から政治家へのエリートコースが閉ざされたことにより、新しいアイデアが直接政治に生かされるチャンスが無くなったのである。(歴史に名を残した政治家の大半は官僚出身である。そして彼らの多くは官僚支配の硬直的体制を打破しようとしたのだった。)
* 官僚の腐敗。上記の原因で高級官僚の発想は、自己あるいは自分の省庁の利益を守るという小さいものになってしまった。(行政法人、天下り etc)
* 行政能力の低い政治家達が、数の力により官僚に対する強い影響力を行使できる根拠となった派閥の力が弱まったこと。

勿論、政治家が今後取るべき方向は、もう一度官僚主導に戻すとか派閥内の教育を強化するとかでは無い。現政党に残されたオプションは:

第一オプション:政治家が勉強して、官僚を主導できる立場までに成長すること。つまり英国型ですね。これは言うは優しいが実現は難しい。時間がかかる。そもそも日本の場合は、プロの政治家とは選挙に勝つことであり、国の為に行政能力(組織運営能力)を発揮することでは無かった。従いこのオプションは却下である。
第二オプション:政治家は議員立法等立法家としての勉強はするが、彼らの理念を行政で実行する大臣には専門家である官僚、経営者、学者を登用する。大体、財務省などの専門知識を必要とするところで素人の政治家が大臣になるのには無理がある。政権与党は、自分たちのビジョンを実現する為の行政官にはその道の専門家を据えれば良いのである。いくら省庁の官僚を善導しようと思っても、彼らの助けが無ければ答弁ひとつできず、又 政権党の意向に反する課長以上の官僚を即座に更迭できる権限を持っていなければ、彼らの意向に沿わざるを得ない。民主党の多くの大臣が苦戦しているのもその為である。勿論、大臣が政権党の意向に反する行為をすれば首にすれば良い。大臣は勿論、意向に沿わない幹部(局長あるいは課長以上)を更迭するのである。

米国は財務長官も司法長官も防衛長官も、専門家でありその道の大家である、国会議員がなることはほとんど無い。優秀な官僚を大臣にすれば彼らの士気も上がるだろう。一方、政権党が変わって官僚組織のトップの顔ぶれが全く変わらないのも異常である。

勿論、チャーチルの様に行政能力に富んだ政治家であればどんどん大臣になってもらいたい。それが理想である。しかし現在の民主党の状況からみて、この定義が当てはまる政治家は少ないと言わざるを得ないだろう。自民党にも是非大臣になってほしい人材は少ないなあ。組織運営の経験がある人が少ないのである。

この記事へのコメント

Zero
2011年05月24日 23:58
大変勉強になりました。特に「5選ルール」のご説明、なるほどと唸ってしまいました。

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